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コメント[ 0 ] 2014年10月13日14:00
 燕の巣(つばめのす、漢名:燕窩)は、アナツバメ類のうち、ジャワアナツバメなど、数種類のツバメの巣で、広東料理の高級食材とされています。
 アナツバメ類は、アマツバメ目アマツバメ科に属し、東南アジア沿岸に生息しています。アマツバメ科は、極端に空中生活に適応したグループであり、繁殖期を除いて、ほとんど地表に降りることはありません。一説には、睡眠も飛翔しながらとると言われるほどです。巣の材料も地表から集めるのではなく、空気中に漂っている鳥の羽毛などの塵埃を集め、これを唾液腺からの分泌物で固めて、皿状の巣を作ります。
 中でも、アナツバメ類の一部は、空中から採集した材料をほとんど使わず、ほぼ全体が唾液腺の分泌物の巣を作ります。一般には、海藻と唾液を混ぜて作った巣と言われていますが、この認識は正しくなく、海藻は基本的には含まれない。
 アナツバメの巣は、海岸近くの断崖に作ります。アナツバメの巣の採取については、東南アジア各国で採取の時期、採取方法などを厳重に管理し、またアナツバメの生息地の環境保護のために立ち入り制限を行っています。アナツバメは、雛が巣立ちしてしまうと同じ巣を利用することはないため、アナツバメが放棄した巣を採取しています。オスは次の発情期になれば、また、唾液腺から特殊な分泌物を吐き出して新たに巣を作ります。
 断崖絶壁における採取作業は、非常に危険が伴う作業です。阮葵生(1727年~1789年)が記した「茶余客話」という書物には、「よく訓練した猿に布袋を背負わせて採取した」と記されているそうです。
 アナツバメの巣は、世界中で高い人気を誇る食材となっており、スープの具やデザートの素材や飾り付けとして用いられています。
 中華料理の中でも、特に広東料理で利用されています。元末明初頃に中華世界に知られるようになり、清代には、ふかひれや乾しあわびと並ぶ高級中華食材として珍重されるようになったいきました。燕の巣が出る宴席は「燕菜席」と呼ばれ、満漢全席に次いで格式の高い宴席となっています。
 2013年、中国政府は綱紀粛正の一環として、接待の宴席に高級料理を用いることを禁じました。この際、高級食材の例としてふかひれとともにツバメの巣が挙げられるなど、21世紀の現代においても贅沢品の代表格であることが伺えます。
 ツバメの巣は、独特のゼリー状の食感が特徴です。タンパク質と多糖類が結合したムチンが主成分であり、タンパク質と共に、糖質の一種であるシアル酸を多く含んでいます。また、インターロイキン-6や上皮成長因子(EGF)、繊維芽細胞成長因子(FGF)様のサイトカインが多種含まれることが分かっています。古くから美容と健康に良いとされている漢方食材で、清の西太后も連日のように食したと伝えられています。
 巣によっては、羽毛などの巣材を含むものから、全くと言っていいほど含まないものまで差があるようです。混ざり物などが少なく作られて間もない物が重宝され、高値がつきやすいそうです。調理に際しては、湯で柔らかく戻してから、ピンセットなどで丁寧に羽毛などを除去する必要があります。
 中国では、古くから赤い燕の巣が珍重されてきました。現在でも赤い巣、オレンジ色の巣が高価で取引される傾向があるため、顧客の好みの色に着色して出荷する生産者も珍しくないようです。赤やオレンジに発色する原因は、岩石からの鉄分や壁土などの色素を含むからとも、発酵の結果によるともされているようですが、詳細は分かっていないようです。また、赤やオレンジ色の巣には、人体に有害な亜硝酸塩が多く含まれているという調査報告もあるようです。亜硝酸塩は水溶性なので、水で洗い流すことが出来ますが、天然、着色を問わず、水で洗い流すことによって赤やオレンジの色素もなくなってしまいます。
 見た目の立派さが価格に影響することもあり、乾燥した巣の表面に糊を塗布して外観を整える手法も広く行われているようです。水に溶いた巣のほか、海藻、豚皮、ラード、植物樹脂などが糊として用いられるケースがあるようです。また、白さを強調するために薬品によって漂白された燕の巣は、独特の匂いが無くなっていたり、薄くなっています。

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